約1兆円の電気・ガス補助金の行方
大半は料金値引き原資、事務局費は43.6億円
物価高対策として実施された「電気・ガス価格激変緩和対策等事業」は、2024年度に9766.5億円が執行された大型事業である。
この事業の目的は、電気・都市ガス料金の値引きを通じて、家計や企業の負担を軽減することにある。
国が家庭に直接現金を配るのではなく、電力会社・ガス会社などの小売事業者が料金を値引きし、その値引き分を国が支援する仕組みだ。
そのため、支出先を見ると、東京電力エナジーパートナー、関西電力、東京ガス、中部電力ミライズ、九州電力など、大手の電力・ガス会社が上位に並ぶ。

支出の大半は、電気・ガス料金の値引き原資
2024年実施分を見ると、主な支出先は、電力会社・ガス会社である。
東京電力エナジーパートナーには1387.7億円、関西電力には784.1億円、東京ガスには765.9億円、中部電力ミライズには700.9億円、九州電力には535.8億円が支払われている。
家庭や企業に直接現金を配るのではなく、毎月の料金を下げる。そのために、料金を請求する側である電力会社・ガス会社を経由して支援が行われている。

事務局業務には43.6億円が支出されている
料金値引きの原資とは別に、事務局業務にも支出がある。
「申請書類の受付、審査支援、コールセンター統括等」として、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に43.6億円が支払われている。
さらに、その下流には、再委託・再々委託の流れがある。
デロイトトーマツテレワークセンターに11.2億円、綜合キャリアオプションに10.3億円、ウェブインパクトに1.4億円、RHEMS Japanに5280万円、楽天インサイトに520万円が流れている。
業務内容としては、審査、コールセンター業務、ホームページ構築、システム開発、効果測定調査などが含まれている。

43.6億円の内訳は、人件費30.3億円・再委託費13.3億円
デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社への43.6億円の内訳を見ると、人件費が30.3億円、再委託費が13.3億円、事業費が190万円となっている。
事務局費の大部分は、人件費と再委託費で構成されている。
全体の執行額9766.5億円から見れば、43.6億円は約0.45%にすぎない。割合だけを見れば、事業全体の中では大きくない。
ただ、金額として見ると43.6億円はやはり目立つ。
特に、人件費30.3億円という数字は大きい。申請書類の受付、審査支援、コールセンター統括、システム運営などを担う事務局業務であるため、一定の人員や運営体制が必要だったことは想像できる。
一方で、30.3億円の人件費が計上されている以上、事務局業務がどの程度の規模で行われていたのかは、この事業を見るうえで重要なポイントになる。
また、再委託費として13.3億円が計上されている点も見逃せない。
下流を見ると、デロイトトーマツテレワークセンター、綜合キャリアオプション、ウェブインパクト、RHEMS Japan、楽天インサイトなどに業務が分かれている。
審査、コールセンター、ホームページ構築、システム開発、効果測定調査など、業務内容自体は大規模補助事業の運営に関わるものだ。
ただ、ここまで再委託の流れが見えると、事務局業務がどのように分担され、どこにどれだけ費用がかかったのかは、かなり重要な論点になる。

成果指標では、料金抑制の効果も示されている
成果指標を見ると、この事業は電気・ガス料金の上昇を抑えるという点で、一定の効果を示している。
2024年度の値引き実施割合は100%、値引きによって生じた不備の改善割合も100%となっている。
また、消費者物価指数における電気・ガス料金支援事業の寄与度は、2024年度実績で-0.37ポイント、家庭世帯の電気料金・都市ガス料金の低減率は16.4%とされている。
物価高の局面で、毎月の電気代やガス代が下がることは、生活者にとって分かりやすい支援である。
その意味では、この事業は単に巨額の支出があっただけではなく、料金抑制という目的に対して一定の役割を果たしたといえる。

まとめ
電気・ガス価格激変緩和対策等事業は、料金上昇を抑えるという点では一定の効果を示している。
支出の大半は、電力会社・ガス会社を通じた料金値引きの原資であり、支出先に大手企業が並ぶこと自体は制度の仕組みによるものだ。
一方で、2024年度だけで9766.5億円が執行され、事務局業務にも43.6億円が支出されている。
生活者に分かりやすい支援だった一方で、約1兆円という規模と、その運営にかかったコストをどう見るかは、議論の余地がある。
物価高対策としての分かりやすさと、巨額補助金としての重さが同時に見える事業だった。